「整骨院を開業したいけど、資金が足りるか不安…」
そんな悩みを抱える人達に注目されているのが「補助金」「助成金」と呼ばれる支援制度です。
この記事では補助金や助成金制度の概要や、整骨院開業時に利用できる補助金・助成金について説明していきます。
整骨院開業の初期費用について
整骨院の開業には、大きく分けて「初期投資」と「運転資金」と呼ばれるお金が必要です。
このうち初期投資は文字通り開業初期(起業計画を立ててから実際に起業するまで)にかかるもので、たとえば店舗の取得資金や医療機器を揃えるためのお金、宣伝費用などが含まれます。
一方の運転資金は実際に開業してからかかるお金ですが、整骨院の事業が安定するまでの数カ月分をあらかじめ確保しておく必要があります。
具体的には家賃や光熱費、人件費などです。
具体的にどれくらいの初期費用が必要かについては、『整骨院の開業資金の目安は?調達方法についても解説します』をお読みください。
開業時に補助金・助成金は使える?
整骨院開業の資金調達手段としては、たとえば「自己資金(貯金)」や「創業融資(借金)」といった手段が考えられます。
とはいえ必要な初期費用のすべてを自己資金で用意できる人はそれほど多くありませんし、融資を受けるにしても「できるだけ借金はしたくない」という人が大半でしょう。
そこで注目されているのが公的な支援制度、つまり補助金や助成金です。
ちなみに補助金・助成金にはさまざまな種類があります。
ただ、補助金・助成金は基本的には「すでに開業している」人が対象となります。
※自治体が実施する補助金・助成金(特定創業支援等事業)は、これから創業する人が使えるケースも。
補助金や助成金だけを当てにするのではなく、あくまで「開業間もない時期を支える手段」として、自己資金や創業融資などと上手に組み合わせて利用してください。
そもそも補助金・助成金とは
補助金と助成金は、どちらも国(もしくは自治体)が給付する公的な資金補助制度です。
創業融資と違って「返済する必要がない」というのが特徴で、多くの企業や個人事業主などに利用されています。
一方、補助金・助成金は国や自治体が政策として実施するものです。
年度によって新しい補助金・助成金が生まれることもあれば、これまで実施されてきた補助金・助成金が廃止されることもあります。
以上が補助金と助成金の主な共通点です。次にそれぞれの違いについて見てみましょう。
補助金 |
助成金 |
|
管轄 |
国(主に経済産業省)や自治体 |
国(主に厚生労働省)や自治体 |
目的 |
創業支援や新事業の創出支援などさまざま |
主に雇用の確保や人材育成支援 |
財源 |
税金(法人税や所得税など) |
雇用保険料 |
募集期間 |
1〜2カ月程度 |
基本的に通年 |
難易度 |
難しい |
簡単 |
これらの違いはあくまで一般的なものです。
自治体が実施する補助金や助成金では両者を特に区別していないものもあるため、まずは内容を確認してから利用するかどうかを判断してみてください。
補助金・助成金の難易度
上の表では補助金の難易度を「難しい」、助成金の難易度を「簡単」としました。
これは補助金がコンペ形式なのに対し、助成金は原則として条件を満たせば給付を受けられるためです。
たとえば、補助金は申請内容(事業計画など)を審査委員会が審査して、加点方式や減点方式などによって評価したうえで給付の有無を決定します。
人気のある補助金の中には、実際に給付を受けられる割合(採択率)が数%というものも珍しくありません。
助成金にはこのような審査制度はないため、条件を満たしている上で申請すればほとんどのケースで給付を受けられます。
ただし助成金の種類ごとに要件が設定されていて、要件を満たさなければ申請できない(つまり、給付を受けられない)点には注意が必要です。
補助金・助成金の注意点
「返済の必要がない」補助金・助成金は非常にありがたい制度ですが、利用するにあたっては注意点もあります。
①全額補助ではない
補助金・助成金はあくまで補助的なものです。
仮に開業に1000万円の資金が必要だったとしても、その全額が支給されるわけではありません。
具体的な支給額は補助金や助成金によって変わりますが、たとえば「小規模事業者持続化補助金」の場合は対象金額の3分の2(上限50万円)、「キャリアアップ助成金」であれば約30万円〜70万円程度です。
②大量の書類作成が必要
補助金・助成金のどちらも、申請の際は大量の申請書類を用意する必要があります。
また一定期間終了後にも実績報告書を作成しなくてはなりません。
書類ミスがあったりするとお金を受け取れないこともあるため、十分注意が必要です。
③後払い
補助金も助成金も後払い(清算払い)が原則です。
まずは自己資金や金融機関からの融資で事業を行い、報告書を提出したあとにお金を受け取ることができます。
つまり初めから補助金・助成金を利用するつもりであっても「事業継続に必要なお金は全額用意しておかなければいけない」ということです。
④用途が指定される
ほとんどの補助金では、お金の用途はあらかじめ指定されています。
具体的な内容は補助金の種類によって変わりますが、たとえば「広告費に使うのはOK」で「パソコン購入はNG」といった具合です。
補助金・助成金を受給するコツ
補助金や助成金を受給するうえで大切なのは「公募要領などの資料をしっかり読む」ことです。
どの補助金・助成金も、制度の目的や申請要件などを明記しています。
また難易度の高い補助金の中には「採択率を上げるポイント」をわざわざ説明しているものもあります。
少しでも確実に受給したいのであれば、配布されている資料はすみずみまで目を通して理解しましょう。
もうひとつのポイントは「情報収集」です。
すでに説明したとおり、補助金や助成金は年度によって新しい制度が出来たり、今までの制度が廃止されたりします。
同じ名前の補助金でも、年度によって要件や支給金額が変わることも少なくありません。
特に補助金は申請期間が短いものが多いため、情報収集のアンテナは常に張っておきましょう。
整骨院の開業間もない人でも使える補助金・助成金
ここからは整骨院の開業から間もない人が使える補助金・助成金の一例を紹介します。
制度によってはすでに募集が終了しているものもありますが、追加募集されることもあるため、情報収集のヒントにしてください。
『小規模事業者持続化補助金』
小規模事業者持続化補助金とは、「小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援する」ことを目的とした中小企業庁(経済産業省)の補助金です。
補助率は対象費用の3分の2、上限は50万円ですが、市区町村などが実施する「特定創業支援等事業」の支援を受けて創業した事業者などは上限が200万円まで引き上げられます。
各地の商工会議所や商工会が窓口になっていて、申請手続だけでなく事業計画などについてアドバイスを受けられるのも魅力です。
公式サイト『令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金』
『IT導入補助金』
IT導入補助金は「中小企業や小規模事業者によるITツール導入を支援」する補助金です。
ITツールは「会計ソフト」「クラウド型電子カルテシステム」といったソフトウェアだけでなく、パソコン本体やタブレットなども対象になります。
補助率はITツール導入にかかった費用の2分の1、最大450万円です。
また認定を受けた「IT導入支援事業者」が申請・手続きをサポートしてくれるのも大きな特徴でしょう。
公式サイト『IT導入補助金2022』
『地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)』
地域雇用開発助成金とは、過疎地域など「雇用機会が特に不足している地域等の事業主が、事業所の設置・整備を行い、併せてその地域に居住する求職者等を雇い入れる」事業者に給付される助成金です。
創業の場合、助成費用は100万円〜1,600万円の範囲で「設置整備費用及び対象労働者の増加数に応じて」支給されます。
なお支給を受けるにはハローワーク等の紹介で2人以上(創業の場合)雇い入れることが必要です。
公式サイト『地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)』
『キャリアアップ助成金』
キャリアアップ助成金とは「非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主」を助成する制度です。
2022年現在、キャリアアップ助成金には以下の7コースがあります。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
支給額はコースによって異なり、たとえば「正社員化コース」の基本額は28万5000円〜72万円です。
公式サイト『雇用・労働 キャリアアップ助成金』
自治体が実施する補助金・助成金(特定創業支援等事業)
補助金・助成金の中には自治体が実施しているものもあります。
具体的な内容は自治体によって異なるため、ここでは「東京都」と「千葉市」の例をご紹介します。
①東京都「創業助成事業募集」
創業助成事業募集は、「都内創業予定者」や「創業して5年未満の中小企業者等」を対象とした助成制度です。
創業初期に必要な経費(賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費)を対象に、費用の3分の2以内、最大300万円まで支給されます。
申請できるのは以下の条件のいずれかに該当する事業者です。
- TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援の終了者
- インキュベーション施設運営計画認定事業の認定施設の入居者
- 都内の公的創業支援施設入居者
- 東京都及び都内区市町村が行う創業を対象とする制度融資利用者
- 都内区市町村で認定特定創業支援等事業(産業競争力強化法)による支援を受けた方
公式サイト『創業助成事業 募集|東京都』
②千葉市「千葉市創業支援補助金」
千葉市創業支援補助金は、「市内で新たに創業する人」を対象に経費の一部を補助する制度です。
補助率は2分の1で、上限は30万円です。申請には以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 補助金交付申請時点で創業2年以内の創業者又は創業予定者
- 特定創業支援等事業の全日程を受講した創業者又は創業予定者(受講から2年以内)
- 市内に住民票若しくは主たる事業所を置く個人又は市内に本店を設置する法人
公式サイト『千葉市創業支援補助金』
補助金・助成金の情報を探すには
補助金・助成金にはさまざまな種類があります。
自分のニーズにぴったり合ったものを効率よく見つけるには、以下の公的サイトからの情報収集がおすすめです。
ミラサポplus
ミラサポplusとは、補助金・給付金の申請や事業のサポートを目的とした国のサイトです。
補助金・助成金を含む支援制度を検索できるだけでなく、実際に精度を活用した中小事業主の事例なども紹介されています。
公式サイト『ミラサポPlus』
J-Net21
J-Net21は、中小企業や創業予定者を支援するポータルサイトです。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営していて、「起業・創業に役立つ情報」や補助金を含む「支援情報」などを記事形式で紹介しています。
公式サイト『J-Net21』
jGrants
jGrantsは「応募から、採択後の手続きまで」補助金申請をワンストップで支援する国のサイト(申請システム)です。
利用には「GビズID」の登録が必要ですが、最近では電子申請が前提の補助金も増えているため登録しておいて損はありません。
公式サイト『jGrants』
その他
自治体が実施する補助金・助成金の情報は、地元自治体のサイトで探すとよいでしょう。
また上で紹介した公的サイト以外にも、補助金や助成金情報を扱うさまざまな民間サイトが存在します。自分の目で見比べて、使いやすいサイトを探してみてください。
まとめ
今回は整骨院開業に利用できる補助金・助成金について、利用上の注意点や情報の探し方などを紹介しました。
ここに挙げたものの他にも補助金・助成金にはさまざまな種類があります。ぜひ自分に合ったものを上手に活用して、新規開業を成功させましょう。